永遠にかみ合わない議論、罵(ののし)り合う人と人。
その根底にあるのは「具体=わかりやすさ」の弊害と、「抽象=知性」の危機。
動物にはない人間の知性を支える頭脳的活動を
「具体」と「抽象」という視点から読み解きます。
具体的言説と抽象的言説のズレを四コマ漫画で表現しています。
【本書より抜粋】
世の中、何ごとも「わかりやすい」方向に流れていきます。
「わかりやすい」とは、多数派に支持されることを意味します。
だからわかりやすい商品のほうが、わかりにくいものよりも売れます。
だから会社では、わかりやすいことをやっている人が必ず優勢になります。
選挙でも大抵「わかりやすい人」が勝ちます。
「わかりやすさ」の象徴が「具体性」です。
本でもテレビ番組でも講演でもネットの記事でも、
「具体的でわかりやすい」表現が求められ、
「抽象的な表現」は多数の人間を相手にした場合には徹底的に嫌われます。
ではなぜあえて、本書は「わかりやすさ」に対して疑問を投げかけるのか。
人間の知性のほとんどは抽象化によって成立しているといっても過言ではありません。
「わかりやすさの時代」にはそれが退化していってしまう危険性があります。
本書の目的は、この「抽象」という言葉に対して正統な評価を与え、
「市民権を取り戻す」ことです。
【本書の一部】
【「知の構造」シリーズ】
第一弾『具体と抽象』に続き、知と社会構造の関係をシンプルに説きます。
第二弾 『「無理」の構造』
努力が報われず、抵抗が無駄に終わるのはなぜか。
本書では、「世の中」と「頭の中」の関係を明らかにし、
閉塞感や苛立ちの原因に迫ります。
第三弾 『自己矛盾劇場』
「知性の限界」ともいうべき「自己矛盾」が生まれる心理の歪みと社会との関係を
身近な事例を取り上げながら模式・可視化します。
本書の目的は、知の構造を見据えつつ自分自身と対峙するための思考法を提案すること。
メタ認知への扉を開く格好のテキストです。
【「具体と抽象」深掘り編!】
「人は言葉を過信している」「スティーブ・ジョブズも歴史に残らない気がする」――「思考」テーマの著作を出し続ける著述家・細谷功と、メガヒットを飛ばし続ける漫画編集者・佐渡島庸平という異色の取り合わせ。「具体と抽象」の往来問答!
担当編集から一言
この作品は、これまで思考の構造を抽象化したうえで、シンプルに図式化してきた細谷功さんの新境地です。
書店からの事前注文は、ビジネス書のご担当者だけでなく、「哲学」のご担当者からもいただいています。
「わかりやすさの時代」への挑戦は、dZEROの挑戦でもあります。
4コマ漫画は、「ギャグ+ほんのちょっと毒をまぶして」の作風の一秒さんに完全おまかせでした。
上がってきた4コマを見て爆笑。著者の細谷さんにも気に入っていただきました。
抽象化力と4コマ漫画。その関係にも思いが至る、かめばかむほど味の出る作品です。
序 章 抽象化なくして生きられない
第1章 数と言葉 人間の頭はどこがすごいのか
第2章 デフォルメ すぐれた物まねや似顔絵とは
第3章 精神世界と物理世界 言葉には二つずつ意味がある
第4章 法則とパターン認識 一を聞いて十を知る
第5章 関係性と構造 図解の目的は何か
第6章 往復運動 たとえ話の成否は何で決まるか
第7章 相対的 「おにぎり」は具体か抽象か
第8章 本質 議論がかみ合わないのはなぜか
第9章 自由度 「原作」を読むか「映画」で見るか
第10章 価値観 「上流」と「下流」は世界が違う
第11章 量と質 「分厚い資料」か「一枚の絵」か
第12章 二者択一と二項対立 そういうことを言ってるんじゃない?
第13章 ベクトル 哲学、理念、コンセプトの役割とは
第14章 アナロジー 「パクリ」と「アイデア」の違い
第15章 階層 かいつまんで話せるのはなぜか
第16章 バイアス 「本末転倒」が起こるメカニズム
第17章 理想と現実 実行に必要なのは何か
第18章 マジックミラー 「下」からは「上」は見えない
第19章 一方通行 一度手にしたら放せない
第20章 共通と相違 抽象化を妨げるものは何か
終 章 抽象化だけでは生きにくい