コロナ後の舞台芸術はどうなる?
ライブパフォーマンスは距離の法則に支配されている。
認知科学によって「舞台」と「客席」の意味を再定義し、
「客の盛り上がり」と「距離」の関係を検証。
オンライン配信を含む
次世代エンターテインメントの創出につなげる一考察。
【著者からのメッセージ】
私がいま劇場認知科学として進めているのは、いわばライブパフォーマンスの科学である。
「近接学」を提唱したエドワード・ホールは、異なる文化に生きる人々を「異なった感覚的世界に住んでおり、会話をする際に保たれる距離を設定するときすら、ほとんど同じ感覚を使っていない」と記述した。
この近接学の系譜を踏まえ、本書が取り扱うのは劇場における距離の問題である。
二〇二〇年三月以降、新型コロナウィルス感染症の影響により、多くの劇場で公演の延期・中止を余儀なくされた。
劇場が将来どのような形になっていくかは、まだ誰も知ることはできない。新たな劇場を創出する際に、舞台と客席の近接学は論拠になりうる。こうした模索を支援するのに本書が役立ってくれればうれしい。――「まえがき」より
序 章:距離の法則による支配
第一章:舞台と客席との距離――境界はなぜ必要か
第二章:客と客との距離――伝播する集合的感情
第三章:劇場空間と感情同期――観客の盛り上がりは何で決まるか
終 章:新たな客席のあり方と劇場認知科学