「声の大きな人の声」を伝える意味は何だろうか。
そんな思いを抱きつつ法王訪日に同行した記者はやがて、
法王の行動や発言に心が動かされていく。
唯一の被爆国である日本でさえ、「核廃絶」に対する諦観や無関心が漂っている。
そんななか、ローマ法王フランシスコは長崎と広島を訪れ、
核なき世界は「実現できる」と明言し、
「使用」のみならず「保有」をも明確に非難した。
法王はなぜいま、訪日を強く望み、被爆地に足を運んだのか。
その背景と意味は何だったのか。
ローマ駐在の日本人記者が法王訪日を同行取材し、
その姿と発言をつぶさに読み解いた貴重な記録。
【著者からのメッセージ】
世界に十三億人超の信者を抱えるカトリックの頂点に立つローマ法王の発信力は絶大だ。放っておいても、そのメッセージは世界に伝わっていく。仕事だから原稿は書くが、「声の大きな人の声」を報道することにそれほど深い意義はない。そんな気持ちをどこかで抱えていたように思う。
ところが法王は、声を出したくても出せない人、出したとしてもそれを世界に届けることができない人のための声に自分自身がなろうと考えていたのだ。本来ならば、われわれ記者こそが率先して果たすべき役割で、最優先にすべき任務のはずではないか。
世界を飛び回る法王の心に、このような思いがあったことを知り、私の意識も変わった。――「おわりに」より
第一章 訪日にかける意気込み
第二章 欧州中心主義からの脱却
第三章 長崎から発した「核なき世界は実現できる」
第四章 広島から発した「核兵器保有も倫理に反する」
第五章 原発、難民受け入れ、死刑制度
第六章 核兵器保有国へのインパクト
付 録 長崎・広島・東京での演説[全文]