深川の風

深川の風

昭和の情話それぞれに
著者 吉川 潮 (著者)
発売日 2016/04/28   価格 1800円(税別)
判型・製本 四六判 並製   頁数 264
ISBN 978-4-907623-22-7   Cコード 0093
発行 dZERO   発売 dZERO

そのときそこには、
人の情けと温かさが確かにあった――。

舞台は昭和20年代から60年代の東京・深川。
気風のいい辰巳芸者(深川芸者の別称)に双子の男の子が生まれました。

実の父を知らずに育った二人ですが、他人の情けに温かく包まれながら、
すくすくと育ちます。
そしてやがて、一人は落語家に、もう一人は任侠道に。
親子・夫婦・師弟・他人の情けが織りなす東京下町人間模様です。


【あとがきより】

この小説を書くきっかけを作ってくれたのは、
私が顧問を務めていた落語立川流の家元、談志師匠である。
家元が肝臓と糖尿病の治療で入院していた平成二十三年二月、
病床で時間を持て余し、よく本を読んでいたようで、見舞いに行くと、
「三亀松(みきまつ)を読み直したよ。
あなたの作品の中じゃやっぱりあれが一番好きだな」と言われた。
平成十五年に刊行した『浮かれ三亀松』のことだ。
「三亀松が生まれ育った深川の風景が浮かんでくる。
また深川を舞台にした小説を書いてくれないかな」
家元が私にそういった注文を出すのは初めてだった。 

 

 

担当編集から一言

dZERO初の「小説」であり、
落語立川流の顧問を長くつとめた吉川潮さんの作品です。
談志師匠を通じたご縁から、dZEROからの刊行となりました。

章見出しはすべて落語の演題。
そして、本書のタイトル「深川の風」は、
「江戸の風が吹いているものを落語である」という談志師匠晩年の名言にちなんでいます。

今もきっとあるはずの、「血縁を超えた〈他人同士の情け〉」を思い出させてくれます。
なんともあったかい読後感の小説です。

第一章 『辰巳の辻占』
第二章 『子別れ』
第三章 『替り目』
第四章 『つるつる』
第五章 『たらちね』
第六章 『四段目』
第七章 『高砂や』
第八章 『火事息子』
最終章 『親子酒』