統合失調症の責任能力 なぜ罪が軽くなるのか

統合失調症の責任能力 なぜ罪が軽くなるのか

著者 岡江 晃 (著者)
発売日 2013/11/08   価格 1800円(税別)
判型・製本 四六判 並製   頁数 288
ISBN 978-4-907623-00-5   Cコード 0095
発行 dZERO   発売 dZERO

●装画:大島たか子
●装丁:大島武宜

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91人の被告人と対面した精神鑑定医(著者)が、
精神障害者の犯罪に切り込んだ衝撃作!

取材殺到の話題作『宅間守 精神鑑定書』の著者による第二弾。
精神障害とりわけ統合失調症(精神分裂症)に対して厳罰化を求める風潮、そして裁判員制度のスタート。
鑑定事例を詳細に引きながら、「責任能力あり・なしの境界線」を世に問う。

 

本書収載の鑑定事例

  • [事例1]車で通勤途上の人たちを次々とはねて多数を殺傷
  • [事例2]父親を包丁で刺して重傷を負わせ、止めに入った母を刺殺
  • [事例3]長年各地を放浪したホームレスがコンビニで焼酎などを万引き

 

著者の岡江晃先生は、2013年10月28日、逝去されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

 

 

担当編集から一言

岡江晃先生とは2012年夏に初めてお会いして、『宅間守 精神鑑定書』の執筆を依頼しました。
宅間守元死刑囚の鑑定書については「過去に何度か出版オファーがあったが固辞してきた」と。
その日は依頼にとどまり、執筆をお引き受けいただくまでに至りませんでした。
再度のお願いにあがることを約束して、法律的に問題がないのか等々、
編集部内で調査が始まりました。複数の法律の専門家に相談し、医師にも相談しました。

3ヵ月近くかけて出した結論は、「数々の困難よりも本書の出版の意義のほうが大きい」でした。
そこで晩秋、上洛して再度のお願いをしたところ、ご執筆を快諾してくださいました。

2013年3月、脱稿。5月下旬に刊行の運びとなりました。
『宅間守 精神鑑定書』の執筆期間中にがんが見つかり、
手術などの治療のために入院されましたが、
闘病のあいだを縫って、執筆、そして著者校正をこなしてくださいました。

2013年5月下旬、出来たばかりの『宅間守 精神鑑定書』を持って上洛し、
第二作のご執筆をお願いしました。

締め切りは2013年9月末日。
7月に打ち合わせのため上洛し、途中までできた原稿をいただきました。
治療の副作用で何を食べても味がわからない、とおっしゃっていましたが、
好きなお酒も召し上がり、お元気でした。

8月中旬、がんの再発が見つかり、気管を切開する手術を受けることになった、
という知らせが届きました。
「二作目を完成させることができなくて申し訳ない」とも。

まもなくして、やっぱり最後まで執筆を継続することにしたというメールをくださり、
無事に脱稿され、校了まで見届けてくださいました。

本書『統合失調症の責任能力 罪が軽くなるのはなぜか』の見本ができたのは11月1日。
最後にメールをくださったのが10月23日、逝去されたのが28日、告別式が30日。

あと数日早く進行していれば見本をお届けできた、という強い悔いが残っていますが、
最後まで本書を世に出すことをあきらめずに執筆をつづけてくださった先生から、
大きな力をいただきました。

ありがとうございました。

Ⅰ なぜ厳罰化が進んでいるのか

   現状をどう見るべきか

   厳罰化の背景にあるもの

Ⅱ 「統合失調症の責任能力」を考えるための三つの鑑定事例

   [事件1]殺人、殺人未遂――Y鑑定書

   [事例2]殺人、殺人未遂――M鑑定書

   [事例3]窃盗――N鑑定書

   [補 遺]統合失調症と診断した他の鑑定例

Ⅲ 責任能力のある・なしの境界線はどこでひくべきか

   責任能力を論じるときに押さえておくべきこと

   裁判員制度における精神鑑定の問題点