1982年生まれの著者は、祖父の兵籍簿を読んだことを発端として、太平洋戦争の「埋もれた記録」に着目する。
横浜支局への配属を機に、横浜で開かれた国内唯一のBC級戦犯裁判(横浜裁判)の調査を開始。日本側資料の「黒塗り」に悪戦苦闘しながらも、米軍公開の裁判記録や巣鴨プリズン文書を収集、2年以上かけて解読・取材に取り組む。
戦争犯罪で死刑となった20~30代の元日本兵。彼らはなぜ処刑されたのか。
米軍資料から掘り起こした膨大な裁判記録が示すのは、不毛な戦争と命令によって未来を破壊された若者の姿だった。
【まえがきより】
法廷は死刑判決の嵐だった。五十一人が戦争犯罪人として刑場の露と消えた。そのうち約七割に当たる三十六人は、私と変わらない二十代や三十代だった。
平成の終わりに、財務省近畿財務局の職員が上からの指示で決裁文書の改竄を強要され、苦悩の末に自殺したように、官庁や企業などの組織で事実の改竄や捏造、不祥事の隠蔽、過労死、自殺、ハラスメントといった事象は絶えることがない。
責任が現場や末端の個人に押し付けられる構図も繰り返されることだろう。もしかすると、横浜裁判(BC級戦犯裁判)は日本社会のありようを映し出す教訓の宝庫かもしれない。
無名の若者たちは戦争の時代に旧日本軍という組織の中でどのように生き、なぜ戦争犯罪人とされて命を絶たれていったのか。 私は裁判記録に眠る事実や秘話を追い求め、国会図書館、国立公文書館、外務省外交史料館を巡り、事件が起きた現場へと向かった。
【目次】
序 章 消えゆく記憶、消えない記録
第一章 捕虜虐待事件の真相と過酷な運命
第二章 陸軍刑務所の米兵焼死と五人の被告
第三章 ニューギニアの米兵斬首と悲劇の連鎖
第四章 昭和史の謎、戦犯の遺骨の行方
第五章 今につながる「個人の滅却」と「機械視」
第六章 黒塗りの戦犯裁判記録を追いかけて
序 章 消えゆく記憶、消えない記録
第一章 捕虜虐待事件の真相と過酷な運命
第二章 陸軍刑務所の米兵焼死と五人の被告
第三章 ニューギニアの米兵斬首と悲劇の連鎖
第四章 昭和史の謎、戦犯の遺骨の行方
第五章 今につながる「個人の滅却」と「機械視」
第六章 黒塗りの戦犯裁判記録を追いかけて